活動特集
2015年度活動特集 4)セミナー「中国茶の楽しみとビジネスへの可能性」特集
§~セミナー「中国茶の楽しみとビジネスへの可能性」(2016.2.6)第2煎~のご紹介§
2月6日(土)、セミナー「中国茶の楽しみとビジネスへの可能性」第2煎を開催し、21名のご参加がありました。
今回は、「中国茶のテロワール:文化と地域性とビジネスの関係」についてお話しくださいました。
テロワールとは、もともとはワイン、コーヒー、茶などの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴をさすフランス語です。 同じ地域の農地は土壌、気候、地形、農業技術が共通するため、
作物にその土地特有の性格を与えるということです。広い茶畑それぞれに個性があるから多様性として中国茶の特性を出すとのことです。
今回は一度に3種類のお茶を配られました。写真にもありますように、すべて鉄観音です。
一番目のお茶はグリーン。最後はブラウン。二番目のお茶はグリーンとブラウンの中間、あえていえばオレンジです。同じ鉄観音で全て産地が異なっています。一番目の鉄観音の原産地は、
福建省の山の高いところ、3番目が台湾、2番目は同じ福建省ですが、ゆっくりと作ったお茶ですとのご説明でした。
藤井氏の説明によると…「土地にすでにある茶樹には土地の個性があります。ここにこの茶樹、この土地柄、気候、地勢…に合った品種を選んでいる前提があります。
人間がお茶の生育を始めてからは、その土地の個性に影響されて人間が学習して失敗しながら現在においてこの茶樹がある理由、この土地柄に合う品種を選んできた結果にあります。
この茶樹、この土地のテロワールがあります。たまたまではなく、人間の研究で、そこにあわせた品種を植えたのです。よりよい相性が実現され、その中で育っていくのでテロワールというものが
明確になっていきます。単に育っているだけのものではなく、これがビジネスの始まりです。最初に作ったときからであり、たまたまの結果の積み重ねからの研究、選択、
販売路につながっていく選択です。」とのことです。
テロワールって具体的に言うとどうなのでしょう。
「味、香り、色、形=お茶の品質」であり、テロワールとは結局総合体であり、それぞれに影響する要素だということです。
お茶の味を4つのわけかたで見てみると、渋い(カテキン)、うまい(アミノ酸)、苦い(カフェイン)、甘い(糖)とわけられるそうです。
この中でもお茶のよしあしは、渋いとうまいのバランスが大事だそうです。茶葉の成長過程なりで、苦いと甘いというのは、あまりコントロールできず、渋い(カテキン)とうまい(アミノ酸)を
コントロールするそうです。カテキンとアミノ酸の関係ですが、地勢、土壌、気候、品種がアミノ酸等のバランスに大きく関わっていて、明確に知られている要素は、
おもにこの4つの要素だそうです。
地勢ですが、海抜によってカテキンとアミノ酸のバランスが影響を受け、カテキンは、海抜が低いところから高いところに行くに従って減っていくそうです。ということは、アミノ酸が増えていきます。
うまみの多いお茶は、海抜が高いほどそうなるとのこと。なるほど。
では、渋いお茶が作りたければ、低いところで作ればいいのですね。それと、摘みとりの時期も関係するそうです。太陽とアミノ酸の関係になりますが、太陽ギンギンの季節、
そう夏に摘んだ方が渋いというわけです。
そしてお茶っぱの「形」の話。
中国茶において緑茶は形が命だということです。他も重要ですが、日本茶と比べたときに、形に重きを置くそうです。
A…香り、色: 100 形: 90
B…香り、色: 90 形: 100
総合でいえば、どちらがいいかといえば、Aだと思います。でも、中国ではBが選ばれるそうです。美しい形を作るためには、繊維の質を柔らかく、葉のサイズを小さくするとのこと。
この評価は文化の違いですね。ですので、中国にむけてお茶を作る場合には、どんなに色や味、香りがよくても形がよくなければいけないのです。
また、茶葉交易のお話もありました。
お茶が飲用として広まりつつあるころ、中国では国内で交易が行なわれていました。
南と北での、お茶と馬の物々交換。雲南省、四川省のほうからの交易で、一番長いところで3000キロの距離をかたまったお茶を背中に負って行きます。
栄養を補う成分を持っていて長い行路に耐えられるものはお茶であり、ひとつの農作物でありました。3000キロ行こうとするわけですから、数カ月かかる場合もあり、
出発した時と到着したのときの葉っぱの違いがでてきていました。緑茶は非常にもちが悪いので、到着までに香りは途中で消えてしまう、それを補うものが花の香りだったことも
お話しくださいました。
最後の質問コーナーにて。
「お茶にするときに、水は大事だと思うのですけれど、飲むときといれるときの『水』、基本的にこれはお茶にとって大事なのでしょうか。」という質問に対して、藤井氏は、
「お茶を飲み物として飲むときには最後に『いれる』ということをしなきゃいけない。100℃でいれている熱いお茶がよくて、80℃だともう香りも味も出ないのです。
どんなによい品質でつくったとしても、ここで0になることがあります。いれ方は大切なのです。水は、すごく重要で、中国でもここまで【1(お茶っぱをつくる):9(水でお茶をいれる)】の割合で、
最後にどういれるのかがものすごく大変です。」
とのご回答をいただきました。また、
「入れ方で味が左右されない、どういれても変わらない、その経過を飛び越すのがペットボトルであり、粉末であります。いれるという行程を抜かしたお茶、今のお茶のあり方であり、
この流れの中でうまれてきたのです。」
ということもお話しくださいました。
次回は最終講座第3煎「中国のお茶ビジネス:業種としての可能性と業界の取り組み」です。
NPO CHINA 日本中国茶協会 代表の王亜雷氏、及びファシリテーターとして立命館孔子学院の白家瑶氏が来てくださいます。引き続き、藤井氏の講演もお楽しみください。
皆さまのお越しを心よりお待ちしております。
立命館大学国際食文化研究センター 活動特集
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§~セミナー「中国茶の楽しみとビジネスへの可能性」(2016.1.23)第1煎~のご紹介§
1月23日(土)、セミナー「中国茶の楽しみとビジネスへの可能性」を開催いたしました。
事前申込者19名に加えて、当日さらに10名の参加者にご来場いただきました。とても穏やかに優しく語りかけてくださる藤井先生。和やかな雰囲気の中でゆったりとお話を伺うことができました。
中国茶2種の試飲もありました。「黄金桂」は透き通った黄色い烏龍茶です。見た目は、緑茶のようで苦味があるのかな…と思って飲むと意外や意外、あっさりとした味わいでした。そして「東方美人」は
茶色い烏龍茶なのですが、紅茶のような味わいでした。どちらも、飲みやすくて本当においしかったです。
藤井氏がされたお話について、少しご紹介します。
1)「おいしい」とは何か。色や形、いろんな要素で判断していると思います。そこで、「おいしい」と1人が叫ぶより、100人が叫ぶ方が「おいしい」ということになります。
商品としての「おいしい」は、「量」 + 「多様性」 = 「商品性」 という式が出来上がると話してくださいました。どんなに一人が「おいしい」ものでも、たくさんの人がそう思わなければ
商品としては成功しないということですね。あらゆる食品においても、たくさんの人が好まない「売れない」ものはなくなっていきますものね…。
2)同じ品種でも、違う土地で植えると気候等の自然条件で変わってくるということ。たとえば、青森のリンゴと長野のリンゴでは味が違ってくるように。それに人口の条件が加わってきます。
大きな人口の国であれば、多様性がうまれてお茶が売れるそうです。中国の人口は、日本の10倍なので、国内に市場があって売れて売れて仕方がないそうです。それに対して、日本は人口規模が
小さいので、売れなくて困るそうです。中国では、需要がありますので、各々の地域の(食)文化に合わせてお茶のバリエーションをつくるそうです。
3)中国茶は基本的に大きく6つに分類されるそうです。緑茶、黄茶、黒茶、白茶、青茶、紅茶。後者の三者は、製造工程に「放置」が入ります。日本でもこの方法でつくられてはいますが、
数字としては残せないそうです。それが、中国では自然と出来てしまった…。それもやはり人口のおかげだということです。私は初耳だったのですが、同じ茶葉から緑茶、烏龍茶、紅茶…なんでも
つくれるそうです。製法の違いでいろんなお茶ができるそうなのですが、そうなんだ~と妙に感心してしまいました。
まだまだお話を聞きたい…というところでしたが、「続きは、また次回。」となりました。
今回、参加された方がお帰りの際に嬉しいお言葉をかけてくださいました。
「場違いかな…と思ったけれど、わかる話もあったし、なるほどとも思えたし、来てよかったです。また来ます。」と、次回の予約もしてくださいました。
また、ご近所で地域のセンターでチラシをご覧になって参加してくださった方もいます。遊茶さんのファンで、遠方からご参加くださった方もいます。みなさまのご参加のきっかけは
様々ですが、足を運んでくださったことに心より感謝いたします。また次回も楽しいお話とおいしい中国茶を飲みに来てくださいませ。本当にありがとうございました。
※次回は2月6日(土)13時~ 「中国茶のテロワール:文化と地域性とビジネスの関係」 についてお話しくださいます。中国茶2種の試飲もあります。
みなさまのお越しを心よりお待ちしております。
立命館大学国際食文化研究センター 活動特集